『エンジン』は燃料の持つ化学エネルギーを機械運動に変換する装置であり、自動車の動力源として現代の便利で豊かな生活を支えています。一方で社会からは、地球環境の保全を目的とし、エンジンから排出される環境汚染物質の低減が求められています。また、エネルギー資源の有効利用のため、エンジンの更なる低燃費化も求められています。
地球環境と調和可能な、環境に優しく高効率なエンジンシステムの構築を目標とした研究に取り組んでいます。特に、熱効率に優れることから将来にわたって自動車の主要動力源としての活躍が見込まれるディーゼルエンジンを対象に、燃料噴霧や燃焼現象の解析など基礎的な研究と、実際のエンジンを使用した技術開発を行う応用的な研究の両面から研究を進めています。
ディーゼルエンジンは燃料である軽油の揮発性の低さから低温条件下では始動性が悪化し、環境に有害な排ガス成分が多く排出されます。そこで、-30℃まで温度を下げることができる低温実験室にエンジンを設置し、始動性の向上に向けた研究に取り組んでいます。
ディーゼルエンジンにはガソリンエンジンに比べ排ガスが「臭い?汚い」という負のイメージがありますが、そのイメージを払拭する、低温始動性に優れ排ガスがクリーンなディーゼルエンジンの実現を目指しています。
ディーゼルエンジンから排出される微粒子状物質(PM)は、生体に悪影響を及ぼすと同時に地球温暖化を加速する一因となります。そのため、ディーゼル車にはエンジンから排出されるPMを捕集するフィルター(DPF)が装備されています。そのDPFにたまったPMの酸化除去に必要なエネルギーは、PMのナノレベルの内部構造によって異なります。
そこで、ディーゼルエンジンの運転条件や燃料性状がPMのナノ構造に及ぼす影響について調査しています。
エンジンは燃料の燃焼で発生する熱を利用して作動します。エンジン内部では限られた空間において短時間で燃焼が行われるため、燃焼ガスには微量ながら有害な成分が含まれます。
有害な排ガス成分をより低減するには燃焼をコントロールする必要がある。燃焼を適切にコントロールするためには燃焼現象の正しい理解が不可欠です。そこで、最新のレーザー分光計測の技術を駆使し、燃焼制御の高度化を目指した燃焼現象の解析を行っています。
林田 和宏Kazuhiro Hayashida
機械電気系 教授