冬季スポーツは地域に根差した競技であり、カーリングは北見ならではのスポーツです。カーリング競技を対象とした研究は、巴比伦娱乐场が取り組む重点研究分野である冬季スポーツ工学の一つとなっています。カーリングは「氷上のチェス」と呼ばれるように、戦術が大変重要な競技です。工学的アプローチによる戦術?戦略の策定に着目し、情報通信技術(ICT)と関連技術を駆使した、「戦術?戦略をナビゲーションする技術」や「戦術?戦略トレーニングを支援する技術」の実現を目指して研究に取り組んでいます。
勝つための次世代カーリングの実現と選手育成を目的として、カーリング戦術支援のためのデジタルスコアブックを開発しました。
従来、カーリングの試合情報の記録は、手作業で紙媒体に記録することが通常でした。これらの作業はコーチやリザーブの選手が担当することが多く、記録すべき内容が多岐に亘ることから担当者にかかる負担が大きくなっていました。また記録情報の整理分析にかかる時間的コストも高いため、データに基づいた客観的戦術立案を逐次的に行うことが困難でした。
これらの問題を解消するために、戦術要素を電子的に記録する手段として「デジタルスコアブック iCE」を開発しました。
デジタルスコアブック iCEは、タブレット端末上で稼働するアプリケーションです。複数の機能モジュールで構成され、試合情報を電子的に記録?解析?可視化することができます。デジタルスコアブックを使って収集した膨大な試合情報を分析し、その中に隠れる重要な特徴やパターンを見出し、戦術立案に役立てる方法の構築に取り組んでいます。これまでに2、400試合、約23万ショットの情報をデータベース化しました。これらのデータを解析することにより、競技レベル毎の特徴や違い、大会やチームの戦術面の特徴がわかってきました。それらの分析ノウハウは既に日本選手権の実況中継にも応用されており、実況中継に特化したリアルタイム試合情報分析システムも構築しています。
競技者の動作を多角的に測定し、測定結果を通して、どのような動きが戦術に関わっているかを知るための解析を行なっています。現在は、デリバリー動作、スウィーピング動作、ストーンの運動などを対象に、10種類の測定システム群からなる「競技力向上支援システム」を活用してデータを蓄積、分析しています。こうした動きに関するデータは立体的な変化の情報であるため、数値や2次元の画面のみでは十分に動作を把握?表現することができません。
解析データを戦術面と関連づける場合も状況は同様です。そこで、複数の測定データをまとめ、VR空間上で可視化する環境の実現に取り組んでいます。
従来PCやタブレットの2次元画面上に可視化していた測定データや解析データを3次元のVR画面上に可視化することにより、従来よりも遥かにリアルな状況で試合の振り返りやトレーニングを行なうことが可能となります。
桝井 文人Fumito Masui
情報通信系 教授