北極河川氷の減少が「積雪」と関係することを発見
このたび、国立研究開発法人海洋研究開発機構北極環境変動総合研究センターの朴昊澤(パクホーテク)主任研究員、本学社会環境工学科の吉川泰弘助教たちで結成された国際研究グループが、近年進行する地球温暖化により北極域における河川の氷の厚さが減少し、結氷時期が遅れ、春の解氷時期が早まる変化を数値モデルの実験と地上?衛星観測データの解析によって明らかにしました。
研究グループは、行きづらいこと、極寒であること等が理由で北極の広域での河川氷の状況を把握することが困難とされる中、河川氷の計算を組み込んで新たに改良したモデルを用いた数値計算により、北極の河川氷の変化を広範囲かつ定量的に評価しました。その結果、北極河川の最大氷厚は1979年から2009年までの過去31年間で、8cm薄くなっていたことを示す計算結果が得られました。
この原因について、河川氷厚の変動には河川氷上の積雪による断熱効果が気温より強く影響すること、さらに、その影響は他地域よりも積雪変化の大きなシベリアで明確に現れることが初めて明らかになりました。
一方、河川の結氷期間については、過去31年間で9日間短縮する結果が得られ、その主要因子は積雪より気温が強く影響していることも感度実験から明らかになりました。
これらの結果は、気温上昇に加えて積雪の断熱効果が加わることで北極域の河川氷はさらに薄くなっており、積雪の変化によって河川氷厚の長期的な変化と地域的な違いが生じること、一方で河川氷の「結氷期間」には積雪よりもむしろ気温が主要影響因子となること等、河川氷がそれぞれの影響因子に対して複雑な応答を示すことを意味します。
研究グループでは今後、河川氷の解氷時期やそれに伴う洪水の発生地点?時期を準リアルタイムかつ季節的に予報する研究を進めていくとともに、氷上の積雪の変動は海氷でも重要な物理過程の一つであることから、今回の河川氷研究で得られた科学成果を海氷減少の解明や将来予測へと繋げていく考えです。
詳しくはこちら
[企画総務課 2016/04/11 更新]